東京大学構内のサンプル2010年10月04日

しばらく前に送っていただいた,東京大学構内の三四郎池と壊徳館周辺のサンプルを処理した.東京都内の記録は10数地点から記録されているが,皇居をのぞいては1,2種が記録されているだけである.東京大学構内からの記録はこれまでない.プレパラートにしてみると,約60個体が見つかった.カマアシムシ類は外見での同定はほぼ不可能だが,見た目の雰囲気として複数種が含まれていそうである.一週間もしたら,検鏡できるようになるだろう.楽しみである.

いわゆる”自炊”をやってみた2010年10月07日

書籍を「裁断→スキャン」してデジタルデータ化する行為を、俗に「自炊」と呼ぶそうだが,私も「自炊」をしてみた.ただし,書籍ではなく論文関係の電子化である.
フラットベットスキャナーも複合機ですませていたが,さすがに自炊には厳しいので,ドキュメントスキャナーを購入した.ScanSnap S-1500が評判がよいようなのでそれにした.裁断機を使用するほど厚いものはないので,カッターで代用である.
早速スキャンしてみると,ドキュメントスキャナーは感動ものである.短時間でスキャンしながらpdfにしてくれる.こんな事ならもっと早く自炊していれば良かった.何せ,自分の論文も十分電子化されていなかったのに,比較検証のために他の方の論文まで依頼され,フラットベットスキャナーで読み込み,pdfに変換して送っていた.何と無駄なことをしていたことか.
自分のものはほぼ終了したので,これから他の論文の電子化である.

久しぶりに見たWenyingia2010年10月11日

東京大学構内のサンプルと同時に,一緒に提供されていた長野県木曽町のものも処理した.両地点のサンプルの検鏡が終了し,それぞれ個人的には面白い結果が得られた.東京大学構内のものは別に報告する必要があるので,ここでは木曽のサンプルについて触れておく.
数種類か得られたが,関東では滅多に目にできないものが含まれている.特にWenyingia kurosai オンタケカマアシムシである.岐阜県御岳と群馬県元白根山の標本を基に記載されて種類であり,標高1700mを越える場所から見つかっていた.個人的には富山県から記録しているが,やはり高標高域であった.群馬県でもそれらしき標本が得られている(ただし標高はあまり高くない)が,標本の状態もあり種名確定まで至っていない.記録地点の多い種ではないが,それが出現した.標高も1000mを超えている地点である.
また,木曽をtype localityとするAcerentulus kisonis ミスジカマアシムシも出現した.この種もどこにでもというものではないので,久しぶりである.

カマアシムシの写真が新聞に載っていた2010年10月14日

数日前の某T新聞を見ていたら,COP10関係で生命誌研究館の活動を紹介する記事があり,「生きものの進化・発生・生態を研究する」というコーナー(囲み記事?)に,カマアシムシの写真が載っていた.キャプションには「原始的な昆虫と仲間と考えられるカマアシムシ」とあった.
さて,この写真の種類は何であろうか.実際には生きたままで,それも写真を見て種類を判定するのはほとんど不可能であるが,ちょっと考えてみた.
カマアシムシ類には4科がある(9科に分ける研究者もいる)が,その中でヨロイカマアシムシ科Sinentomidaeは体が褐色で細長く独特の雰囲気があるので,写真のものではない.ヒメカマアシムシ科Protentomidaeは小さな種類が多く(その前にこの類を採集することが難しい),雰囲気的に違う感じがする.
ごく普通に見られるものはカマアシムシ科Eosentomidaeとクシカマアシムシ科Acerentomidaeのものである.カマアシムシ科のものはクシカマアシムシ科に比べて,全体的に淡い色,半透明である.クシカマアシムシ科は種類にもよるが,濃いものでは飴色をしている.今回の種類は結構濃い色の部類である.それなので,クシカマアシムシ科のものかなと想像した.この中でも普通に見られるのがヨシイムシ(ニッポンカマアシムシ)属Nipponentomonやモリカワカアマシムシ属Baculentulusである.ヨシイムシ属の方が大形で,体色も濃い.だが,何となく尾端の形が気になる.第8節から12節がコンパクトにまとまっているように見える.ヨシイムシ属ではコンパクトにならず,タカナワカマアシムシ属Filientomonやヤマトカマアシムシ属Yamatentomonでこのように見える.ただし,生きて腹部を動かしている状況では違うのかもしれない.
結論から言えば,種類はよく分からない.それでも,こんな種類かなと想像してみるのは楽しいものである.といっても,こんな事を考えるのは私だけだろうが.....

透明化する標本.アルコールのせい?2010年10月30日

福岡県のKさんから九州のサンプルを送っていただいたが,先週からその処理を始めた.一部のものが検鏡できる状況になったので早速見てみたが,標本がやたらと透明化していて同定するのに時間がかかってしまった.
以前にもこのような透明化した標本に出会ったことがあったが,原因までははっきりしていない.今回検鏡しているのは,1980年代の標本である.長い間アルコールに漬けたままだとこのようになるのだろうか.あるいは,抽出時の保存液や保存しているアルコールが違うのだろうか.根拠はないが,何となく長くアルコールつけたままというのが原因のような気がする.
形質の透明化が進んでいて,普通に検鏡するのよりは,ちょっと時間がかかりそうである.