科博新宿分館で標本調査2011年05月17日

国立科学博物館新宿分館に標本調査に行ってきた.新宿分館は今年度中に筑波に移転することになっているので,早く対応しないと標本が見られなくなってしまう可能性がある.昆虫関係は既に梱包したようだが,プレパラート標本はもう少し後(6月か7月)のようである.
調査対象はタカナワカマアシムシ属Filientomonである.特に,タカナワカマアシムシF. takanawanumには毛序などでいくつかの型があり,これらの型が種なのか,亜種なのか,単なる変異なのか,気になっている.以前から,その系統上の位置関係を調べたいと思っていた.
それらの型だが,いくつかの地点のものは手元にある.しかし,故今立先生が日本各地の記録を公表されたなかに,種名不明のままで残っているものがある.科博には今立コレクションが納められていて,その中にその標本がないか調べに行った次第.長野県や長崎県(対馬)の標本は見つけることができたが,残念ながら山梨県や京都府のものは見つからなかった.山梨県は近いので,採集に行こうかと考えている.

Nosekiella-Yavanna2011年05月16日

ウクライナのS女史から,Yavannaの4新種の記載に関してアドバイスを求められた.この属(日本には産しない)はNosekiella(こちらは日本にも産する)とよく似ていて,取り扱いが悩ましい.2007年には中国からこれらに大変よく似たNanshanentulusが記載された.個人的には,これは分けすぎで,NanshanentulusはYavannaのsynonymだと思っている.
NosekiellaとYavannaは大変よく似ているが,これらが含まれるクシカマアシムシ科Acerentomidaeの他の属との関係からすると,前肢ふ節の感覚毛t1の形態(カマアシムシ類では重要な形質)が異なる点から別属としても良いのかもしれない.
S女史は腹部毛序も属の形質として考えているが,これには同意できない.それらは種レベルの形質であろう.それらを属の形質にしてしまうと,それことまとまりがつかなくなってしまう.今がその状況のような気がする.
いずれにせよ,クシカマアシムシ科の属は細かく分けすぎのように感じている.

「利尻島のカマアシムシ類」公表2011年03月23日

利尻島のカマアシムシ類については,2010年1月18日の記事「利尻島のカマアシムシ類」や同年1月24日の「続:利尻島のカマアシムシ類」で報告した.その内容を検討し直した報告が,利尻研究に載った.ちょっと面白い結果なのではないかと思っている(が,他の方はどのように思うだろうか).次のアドレスで論文を見ることができる.なお,冊子では白黒だが,webのpdfではカラーで4種の写真が載っている.
http://homepage.mac.com/rishiri/RS/3009.pdf

なお,礼文島のカマアシムシ類もあわせて調べており,こちらは昨年既に報告した.下のアドレスで見ることができる.
http://homepage.mac.com/rishiri/RS/2912.pdf

Neanisentomon と Pseudanisentomon2011年03月16日

このたびの震災でお亡くなりになられた方々に心よりお悔やみ申し上げます.また,被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます.

今日,中国の研究者からこの1月に刊行された論文が送られてきた.内容は,Neanisentomonという属の新種記載である.この属は日本には産しない.Discussionで近縁属のPseudanisentomon(この属は日本にも出現する)との所属の問題を検討している.これらは,カマアシムシ科(Eosentomidae)のAnisentominaeという亜科に含まれるものである.気になって,この属の違いを比較してみると,第8腹節背板の中央毛Pcの有無と前肢ふ節の感覚毛の消失で属を区別している.個人的には,ちょっと分けすぎではないかと感じる.確かに中央毛Pcの有無というのは珍しい形質ではあるが,種の特徴としても良いのではないだろうか.今回の標本では,この毛序には変異があることが報告されていることだし.

コムシ類の顕微鏡写真2011年02月12日

ずいぶん前に同定依頼された琉球列島のコムシ類の結果をまとめる必要があり,現在共著で原稿を準備中である.その関係で,コムシ類の写真を依頼された.さて,これでどうしようか悩んだ.前にも書いたが(デジカメによる顕微鏡写真),ちょっと大きなものでは,全体を撮影することができないのだ.試してみると,果たして画面に収まりきらない.思案したあげく,昔のデジカメ(Nikon coolpix 950)を取り出し,それを接眼レンズ(10倍)に直接接続してみた.それでも,画面に入りきらない.そこで,さらに接眼レンズを顕微鏡撮影用の2.5倍のレンズに変えてみた.これならば,何とか画面に収まる.また,うまいことにデジカメとレンズ径がほぼ同じなので,フィールドスコープ用のアタッチメントがつけられる.ただし,画像はどうしても粗くなる.下の画像はその方式で撮影した1枚.種類は,Parajapyx isabellae 体長3mm前後である.

ヒメハサミコムシ